「舟を編む」三浦 しをん [BOOK]
本屋大賞に選出され、書店で大量に平積みされているのを見て、なんとなく軟派な帯のため手に取るのをためらいました。でも何度か行き過ぎた後、やっぱりちょっと読んでみようかと手に取ったら止まらなくなりましたよ。
とても時間と労力のかかる辞書編纂の仕組みや苦労が面白おかしく描かれていて、読んでいると辞書の魅力に取りつかれそうになります。登場人物はそれそれキャラが際立っていて、漫画やドラマのように引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。長い年月に渡るストーリーを飛び飛びでコンパクトにまとめている感じなので、若干ものなりない部分もありますが…。とても面白かったです。
「言葉」の持つ深みとか美しさのようなものに気づかされたし、沢山の言葉を覚えて使いこなし、色々な言葉で思いを伝えられたらよいな、という気持ちになりました。子どもの頃、親から買ってもらった辞書で思いつく言葉を引き、新しいことを知った喜びを思い出したり。
そういえば子どもの頃、母に何かを質問すると「辞書を引きなさい!」と一蹴されたっけ。「なんで教えてくれないんだ。お母さんも分からないんだな…」と拗ねたりしたけれど、辞書で調べる癖がついたのは母のおかげ。策士だな、母は。
とても時間と労力のかかる辞書編纂の仕組みや苦労が面白おかしく描かれていて、読んでいると辞書の魅力に取りつかれそうになります。登場人物はそれそれキャラが際立っていて、漫画やドラマのように引き込まれてあっという間に読み終えてしまいました。長い年月に渡るストーリーを飛び飛びでコンパクトにまとめている感じなので、若干ものなりない部分もありますが…。とても面白かったです。
「言葉」の持つ深みとか美しさのようなものに気づかされたし、沢山の言葉を覚えて使いこなし、色々な言葉で思いを伝えられたらよいな、という気持ちになりました。子どもの頃、親から買ってもらった辞書で思いつく言葉を引き、新しいことを知った喜びを思い出したり。
そういえば子どもの頃、母に何かを質問すると「辞書を引きなさい!」と一蹴されたっけ。「なんで教えてくれないんだ。お母さんも分からないんだな…」と拗ねたりしたけれど、辞書で調べる癖がついたのは母のおかげ。策士だな、母は。
「今日のごちそう」橋本 紡 [BOOK]
本の面白いところは、ふとしたきっかけである作家を知り、その人の作品を面白いと思ったら他の作品も読みたくなり、そしてもっと好きになっていくところだと思う。映画も音楽も似ているけれど、かかわっている人が多いせいか時々裏切られることがあるが、本はそういうことが少ないかも。
橋本紡さんもたまたま目にして気に入って、いくつか読んでいるうちにこの「今日のごちそう」にたどりついたのですが、これがまたよかった。
短い作品がたくさん詰まった本で、一篇一篇に料理が出てくる。
一人きりの料理、二人の料理、家族の料理。
料理を作りながらいろいろなことを考える。食べながら思いを巡らす。バラバラの材料がいろいろな過程を経ながらひとつの美味しい料理になるのは、家族ができあがっていくのと似ている。離れかけた気持ちを一つの料理がつなぎとめることもある。
びっくりするような話はないけれど、一つ一つが美味しそうで、読んでいて顔がほころんでくる作品ばかりです。これを読むと料理をしたくなります。
橋本紡さんもたまたま目にして気に入って、いくつか読んでいるうちにこの「今日のごちそう」にたどりついたのですが、これがまたよかった。
短い作品がたくさん詰まった本で、一篇一篇に料理が出てくる。
一人きりの料理、二人の料理、家族の料理。
料理を作りながらいろいろなことを考える。食べながら思いを巡らす。バラバラの材料がいろいろな過程を経ながらひとつの美味しい料理になるのは、家族ができあがっていくのと似ている。離れかけた気持ちを一つの料理がつなぎとめることもある。
びっくりするような話はないけれど、一つ一つが美味しそうで、読んでいて顔がほころんでくる作品ばかりです。これを読むと料理をしたくなります。
「死命」薬丸岳 [BOOK]
別冊文藝春秋に連載されていた「死にゆく者の祈り」です。このタイトルの方がわたしは好きだったな。
主人公の榊は、かつて交際していた女性の首を絞めかけた過去がある。癌で余命わずかとわかり、あのときの、女性を絞殺したい欲望を思い出して、死ぬ前にと実行に移していくお話。
でもホラーではなくて、彼がどうしてそう思うに至ったのかが明らかになるまでの、榊を追う刑事や榊を慕い支える女性の物語でもある。
もう一人の主人公である刑事もまた命が尽きかけているが、病状を家族にも同僚にも隠しながらこの事件の犯人逮捕に人生をかける。
読後感はあまり良いとは言えないのですが、先が気になってどんどん読み進めてしまう作品です。自分の死期が迫ったときに何をするだろうか、などと考えてみたり。
主人公の榊は、かつて交際していた女性の首を絞めかけた過去がある。癌で余命わずかとわかり、あのときの、女性を絞殺したい欲望を思い出して、死ぬ前にと実行に移していくお話。
でもホラーではなくて、彼がどうしてそう思うに至ったのかが明らかになるまでの、榊を追う刑事や榊を慕い支える女性の物語でもある。
もう一人の主人公である刑事もまた命が尽きかけているが、病状を家族にも同僚にも隠しながらこの事件の犯人逮捕に人生をかける。
読後感はあまり良いとは言えないのですが、先が気になってどんどん読み進めてしまう作品です。自分の死期が迫ったときに何をするだろうか、などと考えてみたり。
「小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ」平川克美 [BOOK]
これも最近読んだ本の中では、なかなか心に残るものでした。
東日本大震災の後からか、もしかするともっと前からだった気もするのですが、経済成長に関してはよくわからないモヤモヤとした気持ちでした。成長を続けなければいけないのはどうしてか、成長することをやめるとどうなるのか、そんなことをぼんやりと考えていたのです。
そんな私にヒントを与えてくれたのがこの本。経済成長がなくても普通に暮らしていける世の中を作れればいいし、そのためには「身の回りの人間的なちいさな問題を、自らの責任において引き受けること」が大事だと。
この本、ミシマ社という小さな出版社から出ています。取次を介さずに直接取引をするというスタイルが、この本の趣旨と合っていて妙に感心。クラフト・エヴィング商會の装丁も素敵です。
東日本大震災の後からか、もしかするともっと前からだった気もするのですが、経済成長に関してはよくわからないモヤモヤとした気持ちでした。成長を続けなければいけないのはどうしてか、成長することをやめるとどうなるのか、そんなことをぼんやりと考えていたのです。
そんな私にヒントを与えてくれたのがこの本。経済成長がなくても普通に暮らしていける世の中を作れればいいし、そのためには「身の回りの人間的なちいさな問題を、自らの責任において引き受けること」が大事だと。
この本、ミシマ社という小さな出版社から出ています。取次を介さずに直接取引をするというスタイルが、この本の趣旨と合っていて妙に感心。クラフト・エヴィング商會の装丁も素敵です。
「橋をめぐる―いつかのきみへ、いつかのぼくへ」橋本 紡 [BOOK]
最近忙しくてブログを更新していなかったのですが、結構、読書はしていました。その中でもとても面白くて二度読んだのがこれ、「橋をめぐる」。
橋本紡さんは、もともとラノベを書かれているそうで、これまで接点がなかったのですが、別冊文藝春秋で連載していた「ふれられるよ今は、きみのことを」がとてもしっくりきたので、この本を買って読んでみました。
深川を舞台にした6つの物語は、古くからこの町に暮らす人と、新しく移り住んだ人とが登場しながら、橋や古い建築物も交えて、人間模様が描かれている。橋を渡ることで川を越えるのは、なんとなく気持ちに一区切りがつく気がします。
それぞれのストーリーが趣深いのですが、私は「まつぼっくり橋」がとても気に入っています。新居を探すカップルの話で、男性のほうはマンション設計の仕事をしている。同行する友人は不動産会社に勤めており、二人は建築を学んだ同級生。不満を抱えながら今の仕事をしている二人が、この新居探しを通して本当にやりたいことをやる気持ちになっていくところがいい。カップルの女性のほうも、勝手な彼氏に不安になりながらも、最終的には背中を押してあげるところが良い。
そんな気持ちにさせる町、深川に住んでみたいとおもいました。
橋本紡さんは、もともとラノベを書かれているそうで、これまで接点がなかったのですが、別冊文藝春秋で連載していた「ふれられるよ今は、きみのことを」がとてもしっくりきたので、この本を買って読んでみました。
深川を舞台にした6つの物語は、古くからこの町に暮らす人と、新しく移り住んだ人とが登場しながら、橋や古い建築物も交えて、人間模様が描かれている。橋を渡ることで川を越えるのは、なんとなく気持ちに一区切りがつく気がします。
それぞれのストーリーが趣深いのですが、私は「まつぼっくり橋」がとても気に入っています。新居を探すカップルの話で、男性のほうはマンション設計の仕事をしている。同行する友人は不動産会社に勤めており、二人は建築を学んだ同級生。不満を抱えながら今の仕事をしている二人が、この新居探しを通して本当にやりたいことをやる気持ちになっていくところがいい。カップルの女性のほうも、勝手な彼氏に不安になりながらも、最終的には背中を押してあげるところが良い。
そんな気持ちにさせる町、深川に住んでみたいとおもいました。
「ジェノサイド」高野和明 [BOOK]
だいぶ前から話題になっていたし、入手してあったのだが、あまりの厚さにためらっていた。しかし、読み始めたら止まらずに、結局ほぼ一気読み。
以下ネタばれです。
ストーリーは、創薬化学を研究中の大学院生・研人(この名前、いいですね)のもとに亡くなった父からメールが届くことから始まる。父の指示に従って古い本を開くと、息子への指令があった。父の小型PCを誰にも渡さない、都内某所の取り壊し間近の古アパートに父が作ったラボで、一カ月である薬を完成させる、誰にも言わない、そんなミッションに困惑する研人。
ウイルス学者の父はいったい何をしていたのか?それが分からないまま、急激な流れにのみ込まれていく。
一方、アフリカの奥地では、「見たことのない生物」(?)を探すミッションのために各所から集められた傭兵4人が活動。米国大統領からのこのミッションも詳細が分からない極秘のものだが、ここで見つけたのは頭の大きな幼児だった。実はこれ、人間の進化した高等生物であり、驚異的な頭脳を持っていて、一緒に行動する科学者のPCを使って通信の暗号をとき、アメリカの裏をかいたり、衛星画像を傍受したりしている。(さすが高等生物)
傭兵の一人イエーガーは、自分の息子が難病で死にかけている。高額な治療費のためにこの危険なミッションに参加しているが、実はその息子の病気を治す薬が、この生物の力によって今、日本で開発されそうになっていることを知る。しかしこの生物も自分たちもアメリカから殺される運命にあることを知り、共に逃げることになる。
研人の研究は一筋縄ではいかないし、いろいろな妨害を受けて困難を極める。しかし、以前はどちらかというと漫然と生きていた彼なのに、同じ化学者である父のことを知り、理解し、尊敬して薬を作ろうと頑張る姿は読んでいてジンとくる。
そんな感じで舞台を往き来しながら物語は進んでいき、さらにもうひと山ある感じ。
エンタテインメントとかミステリーという意味ではとても引きつけられるこの作品、惜しいのはこの高等生物がイエーガーの子どもの難病の薬を作る理由だろうか。。。
アウストラロピテクスと我々が違うように、我々と未来の人間も違うんだろうなと思う。でも、次第に進化するものだろうけれど、この物語のように突然、進化した存在が現れたら怖いだろうなぁ。
以下ネタばれです。
ストーリーは、創薬化学を研究中の大学院生・研人(この名前、いいですね)のもとに亡くなった父からメールが届くことから始まる。父の指示に従って古い本を開くと、息子への指令があった。父の小型PCを誰にも渡さない、都内某所の取り壊し間近の古アパートに父が作ったラボで、一カ月である薬を完成させる、誰にも言わない、そんなミッションに困惑する研人。
ウイルス学者の父はいったい何をしていたのか?それが分からないまま、急激な流れにのみ込まれていく。
一方、アフリカの奥地では、「見たことのない生物」(?)を探すミッションのために各所から集められた傭兵4人が活動。米国大統領からのこのミッションも詳細が分からない極秘のものだが、ここで見つけたのは頭の大きな幼児だった。実はこれ、人間の進化した高等生物であり、驚異的な頭脳を持っていて、一緒に行動する科学者のPCを使って通信の暗号をとき、アメリカの裏をかいたり、衛星画像を傍受したりしている。(さすが高等生物)
傭兵の一人イエーガーは、自分の息子が難病で死にかけている。高額な治療費のためにこの危険なミッションに参加しているが、実はその息子の病気を治す薬が、この生物の力によって今、日本で開発されそうになっていることを知る。しかしこの生物も自分たちもアメリカから殺される運命にあることを知り、共に逃げることになる。
研人の研究は一筋縄ではいかないし、いろいろな妨害を受けて困難を極める。しかし、以前はどちらかというと漫然と生きていた彼なのに、同じ化学者である父のことを知り、理解し、尊敬して薬を作ろうと頑張る姿は読んでいてジンとくる。
そんな感じで舞台を往き来しながら物語は進んでいき、さらにもうひと山ある感じ。
エンタテインメントとかミステリーという意味ではとても引きつけられるこの作品、惜しいのはこの高等生物がイエーガーの子どもの難病の薬を作る理由だろうか。。。
アウストラロピテクスと我々が違うように、我々と未来の人間も違うんだろうなと思う。でも、次第に進化するものだろうけれど、この物語のように突然、進化した存在が現れたら怖いだろうなぁ。
「ルーズヴェルト・ゲーム」池井戸潤 [BOOK]
「空飛ぶタイヤ」「鉄の骨」「下町ロケット」と企業小説で人気を集めている池井戸潤さんの新作、「ルーズヴェルト・ゲーム」。
池井戸さんと言えば銀行小説も多いけれど、最近は運送会社、ゼネコン、エンジン部品会社などをテーマにしながら、銀行の人も出てくる構成が面白い。
今回の「ルーズヴェルト・ゲーム」は中堅のエレクトロニクス部品メーカーが舞台で、その傾きかけた経営と、監督や主力選手が抜けた弱い社会人野球チームの、それぞれの戦いがクロスしながら描かれている。過去の失敗のせいで慎重に、後ろ向きになっている人々の逆転劇でもある。
池井戸さんの作品は、悪そうな人がたくさん出てくるし、次々と苦難があるけれど、最終的に正義が勝つものだとわかっている。それでもドキドキワクワクしながら、読み進んでしまうなぁ。最後はちょっと泣ける。
池井戸さんと言えば銀行小説も多いけれど、最近は運送会社、ゼネコン、エンジン部品会社などをテーマにしながら、銀行の人も出てくる構成が面白い。
今回の「ルーズヴェルト・ゲーム」は中堅のエレクトロニクス部品メーカーが舞台で、その傾きかけた経営と、監督や主力選手が抜けた弱い社会人野球チームの、それぞれの戦いがクロスしながら描かれている。過去の失敗のせいで慎重に、後ろ向きになっている人々の逆転劇でもある。
池井戸さんの作品は、悪そうな人がたくさん出てくるし、次々と苦難があるけれど、最終的に正義が勝つものだとわかっている。それでもドキドキワクワクしながら、読み進んでしまうなぁ。最後はちょっと泣ける。
「日本人はどう住まうべきか?」養老さんと隈さん [BOOK]
養老孟司さんは「バカの壁」以来のファンです。そして、隈研吾さんは建築家としていつからともなく尊敬していました。このお二人が、日本人はどう住まうべきかを対談しています。
もともとはWebに載っていたものに加筆されたそうですが、これがなかなか面白い。
日本の街づくり、建築物、高層マンションなどについてや、これから震災復興をどうすべきかなど話されています。
東日本大震災の後の私は、これからどこに住めばよいのか、どういう暮らしをすればよいのか、サラリーマンとして都心のオフィスビルで働いていてよいのか、そもそもこの仕事を続ける意義はあるのか、、、などなど、グルグルしていたのが、少しクリアになった気がする。
いつの日か、仕事を辞めて、マンションは売って、いくつかの街を行き来しながら、のんびりと過ごしているかも。
もともとはWebに載っていたものに加筆されたそうですが、これがなかなか面白い。
日本の街づくり、建築物、高層マンションなどについてや、これから震災復興をどうすべきかなど話されています。
東日本大震災の後の私は、これからどこに住めばよいのか、どういう暮らしをすればよいのか、サラリーマンとして都心のオフィスビルで働いていてよいのか、そもそもこの仕事を続ける意義はあるのか、、、などなど、グルグルしていたのが、少しクリアになった気がする。
いつの日か、仕事を辞めて、マンションは売って、いくつかの街を行き来しながら、のんびりと過ごしているかも。
「水の柩」道尾秀介 [BOOK]
ふだんから道尾さんが好きだ!
でも、そういうひいき目なしでも、この作品は美しくて、香しくて、キラキラしている。
温泉街の旅館の息子、中学生の逸夫が主人公。彼はごく普通のありふれた自分が不満。
数年前、その旅館に泊まった転校生の敦子。彼女は家庭環境の悪さ、学校でのいじめなどもあり、普通を求めている。
敦子が、以前小学生の時に埋めたタイムカプセルを掘り起こし、中の手紙を入れ替えたいと言い、それに逸夫が協力する中で、彼が成長していく姿が苦しくて、でも清々しい。
それだけでも、なになに?という感じなのに、逸夫の祖母がまた、存在感がある。
祖母の生い立ちは、富豪の一人娘が家を飛び出して旅館で働き、そのまま嫁入りし、女将としてやってきたことになっているが、その祖母の過去はホントはちょっと違う。
そういういろいろが明らかになる中で、普段は受け身の逸夫が先頭に立って何かをする姿がまた、男らしい物語。
それと、道尾さんの作品はいつも描写が丁寧で、情景が手に取るようにわかる。しかも今回は匂いに関する描写も多く、臨場感のある作風になっています。
映画化、できると思うなぁ。
でも、そういうひいき目なしでも、この作品は美しくて、香しくて、キラキラしている。
温泉街の旅館の息子、中学生の逸夫が主人公。彼はごく普通のありふれた自分が不満。
数年前、その旅館に泊まった転校生の敦子。彼女は家庭環境の悪さ、学校でのいじめなどもあり、普通を求めている。
敦子が、以前小学生の時に埋めたタイムカプセルを掘り起こし、中の手紙を入れ替えたいと言い、それに逸夫が協力する中で、彼が成長していく姿が苦しくて、でも清々しい。
それだけでも、なになに?という感じなのに、逸夫の祖母がまた、存在感がある。
祖母の生い立ちは、富豪の一人娘が家を飛び出して旅館で働き、そのまま嫁入りし、女将としてやってきたことになっているが、その祖母の過去はホントはちょっと違う。
そういういろいろが明らかになる中で、普段は受け身の逸夫が先頭に立って何かをする姿がまた、男らしい物語。
それと、道尾さんの作品はいつも描写が丁寧で、情景が手に取るようにわかる。しかも今回は匂いに関する描写も多く、臨場感のある作風になっています。
映画化、できると思うなぁ。
「どこから行っても遠い町」川上弘美 [BOOK]
出勤前に駅前の書店を一周して、この短篇集が気になったので購入。意味がわからないタイトルと、郷愁を誘う装丁がキャッチーだったのかも。川上弘美さんは初めて。
電車に乗る22分の間にちょうど一篇が読めるので、毎日少しずつ読んだのだけれど、「それでそれで、次はどうなるの?」という高揚感はなかった。それなのに、なんだかまた最初から読みたくなる感じ。なんでだ?
舞台はひとつの商店街で、いろんな時代のいろんな話が集まった短篇集で、登場人物はリンクしていたりいなかったり。この登場人物、市井の人という感じなのに、実は考えていることがおかしかったり、行動が不思議だったりして、面白い。
特に女性の思考が美化されていないところがいい。女って案外こういうもんだよな~と共感。
電車に乗る22分の間にちょうど一篇が読めるので、毎日少しずつ読んだのだけれど、「それでそれで、次はどうなるの?」という高揚感はなかった。それなのに、なんだかまた最初から読みたくなる感じ。なんでだ?
舞台はひとつの商店街で、いろんな時代のいろんな話が集まった短篇集で、登場人物はリンクしていたりいなかったり。この登場人物、市井の人という感じなのに、実は考えていることがおかしかったり、行動が不思議だったりして、面白い。
特に女性の思考が美化されていないところがいい。女って案外こういうもんだよな~と共感。